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魔法少女リリカルなのはSS 「ある自由待機の光景」 第一話

 これは起動六課設立の一ヵ月後、『ヴィヴィオ』という名の少女の保護責任者にスターズ分隊隊長・高町なのは一等空尉が名乗り上げたのと同時期。機動六課隊舎で起こった、あるロスト・ロギア事件の記録である。

機動六課部隊長 八神はやて二等陸佐


「なのはママ~」

 自由待機(オフシフト)に入り、宿舎に戻ったなのはの元ににヴィヴィオが嬉しそうに飛びついてくる。

「こら、走ったら危ないよ」

 足にしがみつくヴィヴィオを優しく諭しながら、なのははその頭を優しく撫でた。

「ママ~」

「うん? どうかしたの?」

「あのね、抱っこして欲しいの」

 ヴィヴィオのその言葉に、なのはは思わず苦笑を漏らす。
 ヴィヴィオはやはりまだまだ小さな子供だ。誰かに甘えたい盛りなのだろう。
 あまり甘やかすのはどうかと考えているなのはだったが、「空戦のエースオブエース」と呼ばれる彼女も結局は一人の優しい女性。求められるままにヴィヴィオを抱き上げる。

「……ん?」

 その時、ヴィヴィオの腕にブレスレットが付けられている事になのはは気が付いた。何やら小さなモニターのようなものが付いている一品だ。

「ねえヴィヴィオ、それ……ひゃん!?」

 ブレスレットの事を尋ねようとしたなのはだったが、それは自身の少し高めの悲鳴によってかき消された。
 ヴィヴィオがいきなりなのはの胸を揉みしだき始めたのだ。

「ちょっ、ヴィヴィオ!?」

「なのはママのおっぱい、おっきい~」

「――!?」

 あまりの羞恥振りにさすがのなのはもその頬を真っ赤に染め上げる。と、その時どこからともなく、

《Mission complete》

 という機械的な声が聞こえてくる。

「へっ?」

「もういいの~?」

《Mission complete》

「ん~」

 ヴィヴィオは少し名残惜しそうになのはの胸から手を離し、腕の中から飛び下りた。

「バイバーイ、なのはママ~」

 そしてそれだけを言い残してその場から走り去る。

「ちょ、ヴィヴィオ、ちょっと待って。今の一体……あ、あれ?」

 慌ててヴィヴィオを追い掛けるなのはだが、曲がり角のところでほんの一瞬、姿が見えなくなったその瞬間に、ヴィヴィオの姿が忽然と消えてしまっていた。
 ここは一本道でどこかに隠れるような場所もない。運動が苦手である事は自覚しているなのはだが、いくら何でもまだ幼い少女に負けるほど真の運動音痴でもない。

「な、何だったの、今のは?」

 だが、その問いに答えてくれるものはいなかった。


「……ん~!」

 色っぽい声を上げながら、フェイトは両手を上げ大きく伸びをした。
 本局で行われた執務官の定例会に出席し、先程ようやく隊舎に戻ってこられたのだ。

「さすがに疲れた……シャワーでも浴びて少し仮眠を取ろうかな?」

 幸い今日ははやての好意もあって一日自由待機(オフシフト)になっている。今日の定例会で使う資料等の作成の為少し寝不足だったし、ちょうど良い機会だった。

「でもその前にエリオとキャロ、それにヴィヴィオの顔を見ておこう」

 しかしそこはやはりフェイト。どんなに疲れていても周囲に対する気配りは決して忘れていなかった。
 取り敢えず先にシャワーにする事にしたフェイトは着替えを取りに一度自室に足を運ぶ。

「……へっ?」

「……あ」

 そしてそこで、信じられないものを目撃してしまった。

「エ、エリオ?」

「フェ、フェイトさん!?」

 自室……正確には自分となのは、そしてヴィヴィオの相部屋なのだが、そこにエリオが忍び込んでいたのだ。
 だが実際のところその事には問題はない。精神的に成熟しているとはいえエリオはまだ十歳の少年だ。さすがに少しはお説教をしなければいけないだろうが、その事で目くじらを立てる者などいないだろう。いたとしても間違いなくフェイトが庇う。
 問題は、エリオが手にしているものの存在だった。

「あの……どうするの、それ?」

「ち、これは違うんです!」

 全力で否定をするエリオ。だがそれを手に握ったまま言われても説得力は皆無だった。
 フェイトのお気に入りの……黒のショーツを。

(待て、まずは落ち着け私……)

 深呼吸をしてから状況を整理してみる。

 ・定例会を終えて帰宅した。
 ・シャワーを浴びようと思い、着替えを取りに部屋に戻った。
 ・部屋にはエリオが忍び込んでいた。
 ・手に自分のショーツを握って。

 思わず頭を抱えて倒れそうになる。
 どう考えても、何度考えても、エリオがやっている事は……下着泥棒であった。

「エ、エリオ……その、みんなには黙っててあげるからそれ、返してくれないかな? 後、他の人にしたら絶対駄目だよ」

「だから本当に違うんです! ああもう、早く認めてよ!」

「え?」

 半泣きの状態でエリオが叫ぶと、機械的な声が辺りに響いた。

《Mission complete》

「よし。ごめんなさいフェイトさん、後でちゃんと説明しますしお叱りもきちんと受けます。だから今は何も聞かないで下さい!」

 それだけを言い残してフェイトの脇をすり抜け、ソニックムーブでも使っているのかと疑いたくなるくらいものすごい速さで外に出て行くエリオ。

「エ、エリオ! そんなに欲しいならそれあげるから、ちゃんと説明して!」

 爆弾発言を叫びながら、フェイトはエリオの後を追いかける。だが……、

「え? あれ?」

 曲がり角……行き止まりのはずの先に曲がったのを確かに確認したのに、そこにエリオの姿が影も形も見られなかったのだ。

「ど、どういう事?」

 だがいくら考えても答えは一向に出てくる気配がなかった。
 と、そこに、

「あ、あの、フェイトさん」

「ひゃっ!?」

 唐突に声を掛けられ、フェイトは思わず小さな悲鳴を上げる。

「ど、どうかしましたか?」

「キャ、キャロ? う、ううん、何でもないよ」

 慌てて笑顔を取り繕う。とりあえずエリオの名誉の為にも、この事はしばらく自分の中に秘めておくべきだと判断した。

「えっと、キャロは私に何か要なの?」

「その、用といえば用があるんですけど……」

 少し言い辛そうに両手の人差し指を合わせてもじもじとさせる。

「どうしたの? 何か欲しいのもでもあるのかな?」

 お小遣いでもおねだりされるのかと思い、財布の中身を頭の中で確認する。

(うん、ちょっとした金額でも大丈夫なくらいは手持ちだけでもある)

 ちなみにフェイトの「ちょっとした金額」はエリオやキャロ、ヴィヴィオといった人物が対象になるとインフレでも起こしたかのように急速に跳ね上がる。実際は現金だけで高級ホテルのスィートルームに三日は宿泊出来そうなくらいの金額が入っていた。
 だが、その予想は大きく外れた。というよりさっきのエリオと同様、まったく想像していなかった出来事が起きる事となった。

「あの、最初に謝っておきます、フェイトさん、ごめんなさい!」

「へ?」

 フェイトの呆けた声を無視して、キャロはポケットから小さな紙を取り出しそれに目を通す。
 一瞬で頬が赤く染まったかと思うと、大きく息を吸い込んだ。

「おいそこのデカ乳女! おっぱいでかいからって調子に乗ってんじゃねえぞ!」

「ぶふぅっ!?」

 信じられない人物からの信じられない言葉に思いっきり噴き出すフェイト。

「どうせそのおっぱいで男を(笛の音が聞こえた)して(象の泣き声が聞こえた)してるんだろ、恥を知れ、この(金属をぶつけ合う音が聞こえた)女!」

《Mission complete》

 その言葉が聞こえた途端、キャロの瞳に一杯の涙が浮かんだ。

「ふぇぇ、こんなのひどいですよ~!」

 そう言い残し、走り去るキャロ。
 後に残されたフェイトは、

「………」

 燃え尽きたように真っ白になって、口からは魂が飛び出していた。


「おーい、ヴァイスくん」

「あれ? 大将? どうしたんっすか、こんなところに」

 整備場でヘリの点検をしていたヴァイスは、予期せぬ来訪者に驚きの声を上げる。

「あはは、いやな、良いもんあげようと思ってな」

 そう言ってはやては笑いながら二枚の紙をヴァイスに手渡す。

「映画のペア鑑賞券っすか?」

「この前もらったんやけど、うち忙しいから期限内に使えそうになくてな。で、シフト表見たら期限内に見に行けそうなん、ヴァイスくんとティアナくらいやったんや。で、良かったらどうかな、って思ってな」

「まあ、結構好みの映画なんで俺は嬉しいっすけど……ティアナのお譲ちゃんが喜ぶかは微妙じゃないっすか? 相手俺なわけだし」

「……ヴァイスくんやから喜んでついていくと思うんやけどなぁ……まったく、なのはちゃんといいグリフィスくんといい、うちの隊は優秀な逸材ばかりやけどまったく色気ないなあ」

「へ?」

「何でもない。とりあえず、それペアじゃないと使えんからちゃんと誘ったげるん……」

 と、ちょうどそこにタイミング良くティアナがこちらに向かって走ってくるのが確認出来た。

「グッドタイミングや。ほらヴァイスくん、ちゃんと誘うんやで」

 はやてに思いっきり背中を叩かれ、前に一歩踏み出すヴァイス。ちょうどティアナと正面に鉢合わせる形となった。

「あ、えっと……なあティアナ、今大将から映画のペアチケット貰ったんだけど、良かったら……」

 はやての目がある以上、誘わないわけには行かないヴァイスは右手のチケットをひらひらと振りながら慎重に言葉を選ぶ。
 しかしそれはティアナ自身の言葉によって遮られる事となる。

「ヴァ……ヴァイス陸曹……し、失礼しますっ!」

「はい……?」

 顔を真っ赤に染め上げているティアナは突然ヴァイスの左手を掴み、いきなり自分の胸に押し付けた。

「なっ!?」

「ちょっ!?」

 あまりに考えられない人物からのあまりに考えられない行動に、ヴァイスとはやては揃って声を失う。

《Mission complete》

「………」

 唐突に聞こえてきた機械的な声が辺りに響くと、顔を紅く染めたまま無言でヴァイスの手を離す。
 そしてその顔に、鬼の形相としか形容できない表情を浮かべ、

「あんのエロザルッ! 絶対ゴールしてぶっ殺すっ!」

 物騒な言葉を吐いてその場から駆け出していった。

「……ヴァイスくん」

 数十秒後、ようやく正気に戻ったはやてがいまだ固まったままのヴァイスに声を掛ける。
 冷たく、蔑むような声で。

「……まあ、あれや。ちょっとヴァイスくんの事誤解しとったわ。もう手を出し取るとは、やる時はやるんやねヴァイスくんは」

「ちょっ、大将!?」

 ようやく正気に戻ったヴァイスだったが、はやての冷たい視線は更にその温度を下げる。

「でもな、女の子に対してあんな事強要するのは男としてどうかと思うで」

「だから、違っ……」

「……ヘンタイ」

「ぐはっ!?」

 冷ややかな、まるで汚れたものでも見るような視線でぽつりと呟かれたその胸を抉る言葉に、ヴァイスはその場に崩れ落ちる。
 しかし、喜劇……もとい、悲劇は、まだ終わっていなかった。

「あ、あの、八神部隊長!」

「ん? スバルやんか、どうかした?」

 いつの間にかスバルがはやての隣に立っていた。地面に崩れ落ちているヴァイスに一瞬不思議そうな視線を向けたが、すぐにはやてへと戻る。

「……申し訳ありません、失礼します!」

「はい? ……ってひゃあっ!?」

 普段は笑顔を絶やさず、非常時は凛々しい顔で六課を指揮するはやてから黄色い悲鳴が上がった。
 無理もない。スバルによっていきなりスカートをずり下ろされたのだ。可愛らしい水色の下着が惜しげもなく晒される。

「ス、ススス、スバルッ!?」

《Mission complete》

「へっ?」

「ごめんなさいぃぃぃっっっ!」

 脱兎のごとくその場から走り去るスバル。一瞬はやての頭に「マッハキャリバーがなくても充分速そうやなあ」などと場違いな考えが浮かぶ。早い話それくらい混乱していた。

「あの……大将?」

 そしてはやてが呆けているうちに逃げておけばよかったものの、空気を読むのが苦手なのかヴァイスははやてに遠慮がちに声を掛ける。

「……!」

 正気に返ったはやては無言でスカートを元の位置に戻し、再びヴァイスに軽蔑の視線を送る。
 今度は少し頬を紅く染めて。

「あ、あの……?」

「……キング・オブ・ド・ヘンタイ」

「お、俺が何をしたって言うんですかぁぁぁっっっーーー!?」

 ちなみに二人とも気が動転していて気が付いていなかったが、ヴァイスの右手のペアチケットはスバルが来る前にちゃっかり一枚だけになっていたりした。


「……ギンガ、スバルに胸を揉まれる。アイナ、キャロに洗濯物をドロだらけにされる。シャマル、エリオに機材に落書きをされる。ヴィータ、ティアナに頭を撫で回される。ザフィーラ、ヴィヴィオに毛を引き千切られる……等々、他にも数十件にも及ぶ報告が上がっとる」

「……なんていうか、全部子供の悪戯レベルだけどね」

 隊長室に集まったはやて、なのは、フェイトは、この数時間に起こったフォワード陣プラスヴィヴィオによって起こされた事件に思わずため息を吐く。ちなみにフェイトはいまだにソファーで抜け殻状態になっており、口からはつぶらな瞳をした妙に可愛らしい魂がふわふわと漂っていた。

「なのはちゃん、今あの子達は全員自由待機(オフシフト)のはずやよね?」

「うん。隊舎の外に出たっていう報告はないし、みんな機動六課の敷地内のどこかにいるのは間違いないはずだよ」

「……まあ、あの子達が理由もなくあんな事するとは思えんけど、かといってこのまま放っておくわけにもいかんしな。ちょっと様子見てこよか」

「あ、私も行くよ。ヴィヴィオも何か関係してそうだしね」

(わたしもいくよ~)

 お互い頷き合い、隊長室から出て行くなのは、はやて、フェイト……の魂。

「「いやいやいや、ちょっと待った! 糸切れたら色々まずいから元に戻ろう、ね?」」

(あい~)


 起動六課隊舎、休憩室。

「最後に全員集まっとるところを見たシャーリーの話やと、ここでヴィヴィオを交えて楽しそうに談笑していたらしいけど……」

 しかし、誰も居なかった。もぬけの殻である。

「まあ、一時間ほど前の話らしいし、どこか移動したんかな?」

「でも全員が集まれそうな場所ってここと食堂くらいしかないんじゃないかな?」

 そこに遅れてやってきたフェイトが入室してくる。

「あ、フェイトちゃん、どうやった?」

「食堂にも寮の部屋にも、他の場所も色々探して見たけどみんな居なかった。外に出た形跡もなし」

「ん~、確かに隊舎は結構広いけど、それでも一人も見つからないってのはおかしいよね……あれ?」

 ふと休憩室を見回していたなのはが、中央にあるテーブルの上にあるものを見て反応を示す。

「なのは、どうしたの?」

「いや、あれなんだけど……」

 そう言って指差す先にフェイトとはやての視線も移った。

「何やろ、ボードゲームみたいやけど」

「でも、なんだかちょっと気味が悪くない?」

 テーブルの上にはボードゲームのようなマスの描かれたゲーム盤と小さな人形のようなコマ、そしてサイコロが転がっていた。だがフェイトの言うとおり、中央に少々気味の悪い目のようなマークが描かれ、色合いも黒や紫を基調としていて暗い感じを醸し出していた。正直、作った人間の感性を疑ってしまいたくなる一品だ。

「「「あれ? これって……」」」

 目のようなマークをじっと見ていた三人が、同時に何かを思い出したかのような声を上げる。そして一番近くにいたはやてが不用意にその部分に触れてしまった。
 その瞬間、そのマークの部分から激しい光があふれ出し、三人は突然浮遊感に襲われた。

「へ?」

「ふぇ?」

「!?」


 すぐ近くで何かが落下してきたような音が響き、機動六課フォワード陣プラスヴィヴィオは驚いたような顔でその方向に視線を向ける。

「痛った~……」

「うぅ……なのは、大丈夫?」

「と、取り敢えず一番下で下敷きになっているうちの心配をして! というかどいて! 重い、潰れる!」

「ちょ、私そんなに重くないよ! ……確かに訓練多いからちょっと筋肉質かなとは自分でも思うけど……」

「わ、私もそんなには重くないと思う……以下なのはと同文だけど」

「いや、いくら一人分が軽くても二人分なら二倍でさすがに重いから! そしてうちはデスクワーク主体の為ひ弱な女やから! だから早くどいて~っ!」

 コントのようなやり取りを繰り広げていた三人の姿を確認すると、フォワード陣は驚愕の、ヴィヴィオは嬉しそうな表情を浮かべて叫んだ。

「「「「「な、なのは(さん)(隊長)(ママ)、フェイト(さん)(隊長)(ママ)、八神(部隊長)(はやてさん)!? どうしてここに!?(わーい、ママ~♪)」」」」」

 響くフォワード陣の驚きの声と、反して嬉しそうになのはに飛びつくヴィヴィオ。

「うはっ!?」

 プラス子供一人分の体重が追加されたはやては、おおよそ女性の声とは思えない短い悲鳴を上げた。


「……それで、ここは一体どこなん?」

 少々顔が青くなっているはやての言葉に、フォワード陣はお互いの顔を見合わせる。誰が説明するのか、どういう風に説明するのか考えているようだ。
 そして数分後、ティアナが一歩前に出た。

「あの、それじゃあ私から説明します。八神部隊長達、もしかして休憩室にあるボードゲームの目のような部分に触ったりしちゃいました?」

 ティアナの問いにはやては右手を上げる事で答える。同時にフォワード陣全員からため息が漏れた。

「あれが原因なん? 一体何なんやあれ?」

「……私達も詳しくは知らないんですけど、どうもあれ、ロスト・ロギアみたいなんです」

「「「はぁ!?」」」

 突然のとんでもない展開に、なのは、フェイト、はやての三人は同時に声を上げた。

「能力はこうやってあの目のような部分に触れた、及びその周囲にいた人間をこの空間に閉じ込めるというものです。この空間、全体に強力なAMF(アンチ・マギリング・フィールド)のようなものが張り巡らされているようで、魔法はもとよりバリア・ジャケットのセットアップも不可能でした。脱出方法はただひとつ。あそこにあるルーレット……」

 ティアナが指差す先に視線を移すと、そこには確かにフォワード陣プラスヴィヴィオの名前の書かれたルーレットが宙に浮くように存在していた。

「あのルーレットに差された人に指令の書かれた紙が現れます。それをクリアするとサイコロを振る事が出来てその出た目の分だけ、この足場が上に移動するんです」

 今度は地面を指差す。よく見ると円状になっており、これ自体はかなり余裕のある大きさにはなっているが他の足場はまったく見当たらない。そして中央にマス目のようなものが描かれた柱が存在していた。

「なるほど、その腕に付けてるのがそれを判断する機械、って感じか?」

 そう言ってはやてはフォワード陣プラスヴィヴィオが右腕につけているブレスレットを指差す。

「はい。それで、最終的に上にあるあの猿の像まで辿り着けば終了……らしいです、説明によれば」

 その言葉に三人は上を見上げる。確かに遥か上空に猿の像のようなものが見受けられたが、まだまだ豆粒様な大きさだった。

「これでも半分ぐらいは進んだんですよ……恥も何もかもかなぐり捨てて」

 そう言って頬を染め、拳を握り締めるティアナ。ようやく今日のフォーワード陣プラスヴィヴィオの行動の意味が理解出来た三人だった。

「んー、状況は理解出来たけど……取り敢えず質問を二つほど。どうしてロスト・ロギアで遊んだりしてるん?」

 もっともな言葉だった。ロスト・ロギアの危険性は時空管理局に所属している身である全員が嫌というほど叩き込まれ、理解しているはずである。
 ……ただ一人を除いて。

「あの、じつはこれ、ヴィヴィオが持ってきたんです」

 キャロの控えめな言葉に、三人の視線がなのはの胸の中にいるヴィヴィオに集中する。

「最初はみんなでお話していたんですけど、ヴィヴィオが『みんなで遊びたい』って言い出して突然出て行ったかと思うと、これを持って帰ってきて。で、箱から出してヴィヴィオがあの目のような部分に触れてしまった瞬間……」

「えへへ~♪」

 注目されている事に照れたのか、ヴィヴィオは嬉しそうにしている。

「でもかなりレベルの高い封印だよね。そういうものの探知に鋭いキャロでもまったく気が付かなかったくらいだし」

「すみません……」

 責められていると思ったのか、スバルの言葉にキャロは申し訳なさそうに縮こまってしまう。

「あ、責めてるわけじゃないよ!? それくらい凄くて変なロスト・ロギアだったって意味で……ほら、なのはさん達でも気が付かずにこっちに来てしまうくらいだしさ!」

 キャロを慰めているのはよく分かったが、代わりにその三人の自尊心(プライド)を粉々にしてしまう事までには気が回らなかったようだ。

「……質問二。あんな恥ずかしい指令、よく実行しようって気になったよな? どうしてなん?」
 少し沈んだ声でその質問が投げかけられた途端、フォワード陣全員が口を閉じ、身を震わせる。

「……どないしたん、みんな?」

「指令を拒否しようとした場合、ちょっと……かなりやばいものが現れるんです」

「……やばいもの? どんなんが?」

「あ、……ある意味、なのはさんの教導より恐ろしいもの、と言えばどれくらいかお解かりいただけますか?」

「そ、それは確かにとんでもないなあ」

「……ねえ、フェイトちゃん。私の教導ってそんなに恐ろしいのかな?」

「そ、そんな事はないよ……きっと」

 さすがに少々落ち込んでしまったなのはの頭を、ヴィヴィオは「ママ~、いい子いい子♪」と呟きながら撫でた。

「……ねえ、ヴィヴィオ。あのゲーム、どこから持ってきたの?」

 ヴィヴィオを抱え直し、恐らくこの場に居る全員が疑問に思っているであろう事柄を尋ねる。するとヴィヴィオはすんなりと答えた。

「フェイトママに渡されたの~」

「「「「「「はあっ!?」」」」」」

 フェイトを除く全員の声が見事にハモった。だが一番驚いたのは当然フェイトだ。

「え、ええっと……」

 全員の視線が集まる中、フェイトは必死でその時の事を思い出した。


「フェイトママ~」

「ん? ヴィヴィオ、どうかしたの?」

「あのね、スバルさん達と一緒に遊びたいの。それでね、何かないかな?」

「……ん~、もしかしてみんなで遊べる道具がないか探してるの?」

「うん♪」

「ふふ、わかった、ちょっと待ってね。確か前に六課の親睦会で使ったゲームが倉庫にあったはずだから……あれ? ボードゲーム、二つもあったっけ? ……まあ、これならヴィヴィオでもすぐ理解出来るよね……はい、ヴィヴィオ、ルールはエリオ達に教えてもらってね」

「うん、ありがと、フェイトママ~」

「うん♪ フェイトママ達もお仕事終わったら行くからね。美味しいお菓子も一緒に♪」

「うわーい♪」


「……と、いう事が……確かに……あった、けど……」

 じっとりとした視線に耐え切れず、目を逸らしながら小声で呟くフェイト。そんな様子を見るに見かねたエリオとキャロが何とかフォローをしようとする。

「で、でも、という事はあれ、倉庫にあったんですよね? なんでロスト・ロギアがそんなところにあったんでしょう? ね、エリオくん」

「そ、そうだよねキャロ、変だよね」

 棒読みながらも的を射た言葉に、再び全員が沈黙をする。

「……あ゛っ」

 ただ一人、なのはを除いて。


「はやてちゃーん、これ、頼まれてた本部提出用の請求書なんだけど……あれ? いないや。見回りかな……ん? これ……ボードゲーム? 何でこんなところに……またアコーズ査察官が来て遊び相手でもしてたのかな? 見つかったら体裁悪いだろうから片付けといてあげよ」


「……と、いう事で部隊長室にあったあれを……倉庫、に……」

 その場にいたほぼ全員……フェイトですら、じっとりした視線をなのはは乾いた笑いを浮かべながら受け止める。
 対象外だったのは、そんななのはを不思議そうに見つめているヴィヴィオと、そして……。

「あ、あははははは……」

 何故か冷や汗を浮かべながら乾いた笑いを浮かべる……はやてだった。


「主はやて。先程民間人からこのような箱を預けられたのですが……」

「ああ、シグナム。ごくろうさん。それな、この近くのおもちゃ屋で見つかったロスト・ロギアなんや。危険度は低いらしいんやけどロスト・ロギア、って事やから管理局で預かる事に決まってな、一番近かったこの機動六課の隊舎で一時預かりする事になったんや。後でキャロに練習かねて封印掛けてもらっとくからそこ置いといてもらえるか?」

「了解しました。あとこちらが主宛の手紙です。それでは私は仕事の方に戻りますので」

「うん、ありがとー……あっ、この前応募したクイズの景品当たっとる! 映画のペアチケットか……うーん、残念やけどうちは行けそうにないなあ……ふむ、ヴァイスくんとティアナがその日自由待機(オフシフト)か……んふふ、これは部隊長として一肌脱いだらななあ♪」


「……あー、つまり何ですか? ロスト・ロギアの管理よりも余計なお節介を行う事の方に気持ちが傾いて、そのまま放置していたと?」

「余計なお節介とか酷いやん、部隊長として、隊員の恋愛事情にちょっとテコ入れを……ごめんなさい、土下座しますんで睨まんといて下さい」

 セットアップが可能だったならば間違いなくクロスミラージュを突きつけられていたであろう形相で睨むティアナに、はやては本当にその場で土下座をした。

「……まあ、どうやら私達もまったく無関係、ってわけじゃなさそうだね」

「そうだね。現にどうやら私達もプレイヤーとして認識されたみたいだし」

 いつの間にか右腕にはめられていたブレスレットを見て、なのはとフェイトは同時にため息を吐いた。

「そうやね、それじゃあとっとと始めよか……それにしても、何かこのゲーム、どこかで見た事あるような……?」

 頭を上げ、何かを考える素振りを見せていたはやてだったが、唐突にぽんっ、と手を叩いた。

「ああ、思い出した! 罰ゲームといい、あの目といい、一昔前にうちらの世界で流行った漫画の展開にそっくりなんや! 確か『闇のゲ……」

「『モンオト』のゲームです」

 はやてが言い切る前に、ティアナはそれを遮るように告げた。

「はぁ……?」

「だから、『モンオト』のゲームなんですよ、これ」

「いや、だから『門音』で『闇のゲー……」

「「「「「「『モンオト』のゲームです!」」」」」」

「そ、そうですか……」

 ヴィヴィオを除く全員から鬼気迫るような声で断言され、はやてはその先を言うのを取り止める事にした。


 こうして、なのは、フェイト、そしてはやてを新たに加え、『闇のゲ……もとい、『モンオト』のゲームが再開された。
 ……その先の笑劇……もとい、悲劇を感じ取れないまま……。

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 ギャグ系SS「ある自由待機の光景」、UPしましたw ちなみにミクシィやなのはSNSで公開していたものの加筆修正版ですw 大元の原稿があるのでしばらくは(出来るだけ)一日一話のペースでUPしようと思っていますw

テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

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