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ANGELS STORYS ~LYRICAL NANOHA A&A~ 第五話 火神と水神

 前回のカリムさんの話が意外と好評で書いた本人がびっくりしていますw なので密かにシリーズ物にしようか考え中ww
 それにしても……暑いですね><;

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「取り敢えず、話をまとめよか?」

 宿の中にあるレストランで注文していた軽い食事と飲み物が来たのを確認すると、ある者にとっては偶然に、ある者にとっては必然的にここ第五管理世界「ランドグリス」に集まったなのは、フェイト、はやての三人プラスリィンは、それぞれどうしてここに来たのかを順に話していく事にした。

「世界がひとつ……消滅した?」

「ユーノが……行方不明?」

「ジェイル・スカリエッティが……軌道拘置所で殺された?」

 それぞれの口から語られた内容は、とても信じがたいものではあったが。
 ちなみにフェイトはあの謎の少女……フィーに会った事、はやてはジェノと出会っている事を隠していた。

「そしてその三件の……一見何ら関係のない事件に思えるみっつの事件に共通しているもの。それが……」

「第五管理世界……『ランドグリス』」

 三人の間に沈黙が訪れる。それぞれ何か考えているようだ。

「……それにしても、直接の手掛かりがあったなのはちゃんや、ここからしかいけない世界だったっていううちの場合はともかく、フェイトちゃんはようここに犯人がいるかもなんて情報手に入れられたな?」

 それは普通なら当然の疑問だったのだろうが、はやての立場からすれば意地悪な質問でもあった。当然のごとくフェイトに焦りが見える。

「あ、うん……執務官のちょっとした筋から、ね」

 そう言ってお茶を濁すフェイトだったが、はやてにはそれで確信が生まれた。
 この件にはスカリエッティ以外にも……いや、もしかしたら口実に使っただけで本当は関わっていないかもしれない。確実に関わっているのは彼……聖に関する何かである……と。

(問題はなのはちゃんの方か……)

 彼女は十年前のあの事件に関わっていない。事故で入院していたのだから当然だ。
 だが、彼……ジェノは言っていた。なのはは、自分達とは違う何者かの……言ってしまえばイレギュラーな存在から関わりを持っていると。

「うーん……これはユーノくんのことが一番心配やな。フェイトちゃん、ここで三人集まったのも何かの縁や。うちらも手伝ったらんか?」

 はやての言葉にフェイトは何も言わずに首を縦に振る。

「え? で、でも二人も用事が……」

「私はもともと単なる可能性でしかなかったから。それに、なのは達に協力する事で見える事もあるかも知れない」

「うちはこの世界からしか行けなかった世界の調査やしな。ユーノくん見つけて協力してもらった方が都合がええんや」

「……ありがと、フェイトちゃん、はやてちゃん」

 笑顔でそう答える二人に、なのはは少し涙ぐみながら礼を述べた。
 二人とも、その裏に小さな思惑があるという事を知らないまま……。


「さて、となるとユーノくんがどこに行ったのかっていう話やけど」

「ユーノは考古学者だからね。普通に考えればやっぱり遺跡とかが目当てじゃないかな?」

「行方不明という状況を普通と考えるかは謎やけどな」

 はやては苦笑を漏らしながら、自分が持っていた「ランドグリス」のガイドブックをなのはとフェイトの前に広げる。

「これ見てもらったら分かると思うんやけど、この『ランドグリス』はな、地球でいう赤道に沿って街が展開されとるんや。この辺りがこの星では一番気候が安定していて過ごしやすいらしい。そして首都の『リーゼンヘルム』ってとこにこの星の守り神とされている二神……『火神イフリース』と『水神アクオーン』が祭られとる『中央神殿』がある」

 世界地図を指差しながらその場所を説明していくはやて。

「そして、ここから北半球は全体が広大な砂漠地帯らしいんや。平均気温は日中五十度、夜はマイナス二十四度。水もなくとても人が住める環境やない。で、北極点の位置に『火神イフリース』の本神殿とされる遺跡があるんやと」

「火の神の神殿……」

「逆に南半球は今度は水しかない。ほんと、一面水の世界や。島もまったく存在しない。あるのは南極点に浮かんどる『水神アクオーン』の本神殿のみ、との事や」

「こっちは水の神様の神殿なんだね」

「はやて、じゃあ首都にある『中央神殿』は何なの?」

「そんな場所にある神殿、おいそれと行けんやろ? だから『中央神殿』っていう言わば神様の別荘みたいなのを作ったらしいで。この星の主な遺跡はこのみっつしかないみたいや」

「きっと、ユーノはそのどこかにいる……もしくは、向かっている可能性が高いね」

 フェイトの言葉になのはとはやては頷く。

「問題はそのみっつの神殿が離れた位置にあるって事なんや。順番に回っていたら最悪ユーノくんとすれ違いになる可能性が……」

「あーもしもしお嬢さん方、ちょっといいかね?」

「「「えっ?」」」

 三人はほぼ同時にそう声を上げた。
 いつの間にかなのは達の座っているテーブルのすぐ近くに初老の男性が立っていたのだ。しわくちゃの顔に満面の笑みを浮かべているこの初老の男性は格好から推理するにこの星の民間人のようだった。

「んーっと、おじいちゃんうちらに何か用ですか?」

「ああ。お嬢さん達今ユーノという名前を出しとったよな? もしかして長い金色の髪に眼鏡を掛けた、お嬢さん達と同い年くらいの青年の事かね?」

 思わぬ情報源の出現になのはが席から勢いよく立ち上がり、初老の男性に詰め寄る。

「おじいさん、ユーノくんの事知ってるの!?」

「ちょっ、なのはちゃん落ち着きや」

 はやてはそう言ってなのはの肩を掴んで半ば強引に元の席に座らせた。代わりに初老の男性に問い掛けるのは、執務官という職業柄そういう事に長けているフェイトの役目となった。

「それで、おじいさんはユーノとどのような関係なのですか?」

 なのはの行動に少しびっくりしていた様子の初老の男性だったが、フェイトの穏やかな笑みと言葉に落ち着きを取り戻したのかゆっくりと語りだす。

「ふむ……実は先日あの青年に怪我をしていたうちの孫を助けてもらった事があってな。その礼としてしばらく宿を提供していたのじゃよ」

「あの、今もですか?」

「いんや。昨日から姿が見えんようになった。うちの孫がなついとったからな、こうして探しておるのじゃよ。いやあ、孫バカですまんの」

 初老の男性は軽快に笑い出した。なのは達も釣られて小さく笑みをこぼす。

「で、もしお嬢さん達が知り合いだったら一言『また遊びに来てくれんか』と伝えてもらえんかの? それと、忘れ物じゃ。これを返してあげてくれ。大事にしとったようだからの」

 そう言って何か紐のようなものをフェイトに渡し、初老の男性は三人に軽く手を振ってから立ち去って行った。

「それって……リボンか?」

 フェイトに手渡された紐のようなものをあらためて眺めていたはやてがそう呟く。

「うん、そうみたい」

「それ……」

「なのは?」

 そして、そのリボンを見て一番反応していたのはなのはであった。

「なのはちゃん、知っとるん?」

「うん、だって……それ、私のリボンだから」

「「ええっ!?」」

 なのはが言うには、今フェイトの手にあるリボンは前にユーノの手伝いで無限書庫の整理をしていた時、ユーノが自身の髪を纏めていたゴムがふと切れてしまった時になのはが自分のリボンを外して付けてあげたものらしい。流石にユーノは恥ずかしそうだったが、はずそうとはしなかったのが嬉しかったとか何とか。

「……確かに隅の方に刺繍で『NANOHA』って入ってる」

「なるほどなあ……これは確定やな。ユーノくんは間違いなくここ……『ランドグリス』に来ていたで」

 はやての出した結論になのはとフェイトも頷いた。

「……こうなったらもうその『神殿』を探してみるしかないね。はやて、どうする? 全員で一緒に行動する?」

「いや、さっきも言ったとおり、『神殿』同士かなり離れとる。一緒に行動は効率的やない。幸い『神殿』はみっつ。うちらも三人……」

「……はやてちゃん、そしてみなさんもさっきからリィンの事忘れてないですか?」

 テーブルの隅でいじけていたリィンが流石に怒ったような表情で抗議してきた。そういえばさっきの初老の男性もツッコミを入れてこなかったが気が付かなかったのだろうか。

「あはは、そうやったな。まあ、ちょうどいい感じで分担出来るんやから手分けした方が高効率やろ」

「そうだね。じゃあ私が北極にあるっていうイフリースの本神殿に行くよ。三人の中じゃ私が一番速いから砂漠でのダメージは一番少なくて到着出来るだろうし」

「そやな、でもちゃんと装備は整えていってな。いくら速いって言っても流石に往復で世界半周分じゃあそれなりの装備はいるやろうし」

「うん、分かってる」

「じゃあうちは南極のアクオーンの本神殿に行くわ。休憩できる場所がないと思われる分、本神殿のある場所まで休まずに飛んで行ける持久力が必要やしな。魔力の大きさは何気にうちが一番やし、リィンもおるしな」

「はいです!」

 そう言って各自の目的地が半ば自動的に決まりつつあったのだが、流石になのはが声を上げる。

「で、でもそれじゃあ私は必然的に担当する事になるのは中央神殿だよね? ここから一番近くて移動にも事欠かない。いくらなんでも私事に友達にきついところを任せて自分は一番楽なところっていうのは……」

 申し訳なさそうにいうなのはだったが、フェイトとはやてはそんななのはを笑い飛ばす。

「いいから。適材適所に当てはめた結果なんだから。私達は望んでやってるんだよ?」

「そういう事や。だから、そう思うんやったらなのはちゃんもしっかり探してや、な」

 笑顔でそう言う二人に、なのはは目尻に涙を浮かべながら小さく呟いた。

「うん……本当に、ありがとね」


「……これで、よかったのか?」

 店から出た初老の男性は、真っ直ぐに街の裏路地に入るとそこにいたひとつの人影にそう声を掛けた。

「ああ、ご苦労……ほら、返してやるよ」

 人影から発せられた声……どうやら男のようだ。ようだ、というのはその人影が怪しげな仮面で顔を隠しているからである。真っ黒な、ピエロのような笑みを浮かべている仮面を。
 そしてその声と同時に、仮面と同じように黒いマントの下からひとりの少女が姿を表す。少女がふとその目を開け、初老の男性の姿を確認すると、

「!? おじいちゃん!」

 そう叫んで飛びついた。少女のその身は震えている。まるで、何か恐ろしいものを見ていたかのように。

「……お前さんは何者なんじゃ? あの青年をどこにやった? ……あのお嬢ちゃん達をどうするつもりじゃ?」

 震える少女を抱きしめながら、初老の男性は先程なのは達に見せていた温和な表情からは想像出来ないほど鋭い視線で仮面の男を睨む。
 先程初老の男性がなのは達に伝えた事は全て真実だった。だが、それを彼女達に伝えたのは自分の意思ではない。今目の前にいるこの仮面を着けた男に孫を人質に取られて言わされたものであった。

「答える必要はない……お前の役目は終わった。五体満足であるうちに消えた方がいいぞ」

 冷たい声で吐かれるその言葉に、初老の男性は悔しそうに歯を食いしばると、

「……我が主たる火と水の神よ。どうか我を許したもれ。そして願わくば……この者に、神の裁きを」
 そう言葉を残し、まだ震える少女を抱きしめてその場を離れていった。

「……ふふっ」

 そして初老の男性の姿が見えなくなると、仮面の男は笑みをこぼす。と言っても仮面を着けているので判断はその笑い声からだったが。

「さあ、もうすぐだ……もうすぐ君を迎えに行くよ」

 その声は、楽しそうだった。

「創世よ、破滅よ、見ているがいい……もたらしてやるよ、この世に、『混沌』を」

 その声は、底冷えするほど冷たかった。

「そして手に入れてやるよ……『混沌』の、伴侶を……ねえ、なのは」

 その声は、ただ純粋に……嬉しそうだった。


「……弱い」

「何がだ?」

「何言ってるんだよアクオーン! あいつらの事に決まってるだろ! 俺は強いって聞いてたから喜んで来たのに期待外れもいいとこだぜ!? この炎の神獣イフリースさまを落胆させた罪、償ってもらわないと困るんだよ!」

「……随分と勝手な言い草だな。殺せという命令は受けていないぞ」

「殺しやしないさ。ただ遊ぶだけだ」

「………」

 それは、時を同じくして遥か上空で行われていた会話であった。


「……ふぅ。流石に、暑い」

 翌日。砂漠を高速で飛行していたフェイトは小さな岩陰を見つけると、そこに降り立ち僅かな休息を取る事にした。
 こういった岩場はこれまでも所々にあった。どうやらかつてイフリースの本神殿に向かう調査団が休息地として岩を設置していったらしい。決して短くはない日々をかけて。
 だがお陰で移動は思っていたより楽だし、もしユーノがイフリースの本神殿に向かっていた場合の発見の目印にもなっていた。本来ならこの世界特有の移動手段となる動物がいるらしいのだが、フェイトは自分で飛んだ方が早いという事を確認すると砂漠用の装備だけを整えてこうして自らの飛行で目的地へと向かっていた。

「ユーノも飛行魔法が使えるし、やっぱり飛んでいったのかな?」

 顔を隠していた布とゴーグルを外し……飛行するならこうしておかないと空中に舞う砂で口の中や目をやられるとの事だった……持っていた水で水分補給をしながら探し人の事を考えていた。

「まったくもう……なのはを悲しませるなんて、ユーノらしくない」

 会えたら散々怒ってやろう。そしてちゃんとなのはに謝らせよう。
 そう思いながら五分ほどの僅かな休息の後、フェイトは再び空に舞い上がった。
 目的地まで、もうそんなに遠くはない。一気に行こう。そう思い加速しようとしたその時だった。

「――っ!?」

 目の前に炎の玉が現れた。いや、こちらに向かってきた。

《Defenser plus》

 フェイトは咄嗟に防御魔法「ディフェンサープラス」を展開しそれを跳ね除ける。普段は回避を念頭においているはずのフェイトがそうしなければいけないほど、その火の玉は速く、そして高威力だとフェイトの感が告げたのだ。

「へぇ……なかなかやるじゃん。流石創世の神さま。半端者を伴侶になんて選ばないか」

 そんな声とともに聞こえてくる拍手の音。その主はいつの間にかフェイトの前方に佇んでいた。
 真っ赤な瞳と、真っ赤な髪……服の方も赤を基調としている。顔もどこか挑戦的で、炎のような男だとフェイトは思った。
 ……いや、違う。あれは服ではない。あれは……、

「バリア・ジャケット?」

「おいおい、あんたらの粗末な防護服と一緒にすんなよ? こいつはバリア・ジャケットなんて名前じゃねえ……選ばれし神のみが着用できる聖なる衣……『神聖衣(ディバイン・クロージング)』ってんだよ。創世の神が身に着けていたとこ見た事あるだろ?」

「『神聖衣(ディバイン・クロージング)』……」

 初めて聞く名に驚きを隠せないフェイトだったが、はっと今目の前にいる人物が言っていた名前を思い出し、正に驚愕という言葉がぴったり合うような顔になる。

「あなた……お兄さんを、聖を知っているの!?」

「ああん? おかしな事を聞く伴侶だな? 当然だろ、俺は『神獣』イフリース様だぜ?」

「神、獣……? まさか、あの『アトロポス』と、同じ存在だとでも言うの!?」

 フェイトの言葉を肯定するかのように、赤毛の男……イフリースは笑みをこぼした。

「わざわざ出向いてやったんだ。少しは楽しませてくれよ? なあ、『アトロポス』を倒した伴侶さまよ?」

「ま、待って! 私は何も戦いに来たわけじゃ……」

 フェイトは慌てて戦う意思がない事を伝えようとするが、イフリースの方は問答無用といった感じで手を掲げる。

「来い! 『フランヴェルジュ』!」

 その声と共にイフリースの手に現れたのは、赤く、鮮やかな炎を上げる一本の槍だった。

「古代ベルカ時代は剣だったんだけどな、俺のものになってからは槍に叩きなおしたんだ。なかなかいい品だろ?」

 まるで自慢のおもちゃを見せ付けるようにイフリースは笑った。それを見てフェイトは確信する。

――ああ、この男は……いや、この「神」は「戦神」なのだ。

 と。
 自分やシグナムもよく「戦闘狂」などと言われるが、この「神」は違う。「戦闘」が、戦う事で己を磨くのが好きなのではない。「戦(いくさ)」……戦争で、命を奪うのが好きなのだと。
 だったら……遠慮など、いらないだろう。

「……バルディッシュ!」

《Get set》

「バルディッシュ・アサルト……セットアップ!」

 己のデバイス……バルディッシュをウェイトモードからスタンバイモードへと変え、自身もバリア・ジャケットを身に纏う。

「ふん、ようやく戦う気になったか。そう来なくっちゃな!」

 やはり嬉しそうに笑うイフリース。フェイトはそんな彼を鋭い眼光で一瞥してから、バルディッシュを振るった。

「言っても分からないみたいだから、身体に聞く事にするわね。ユーノの事、そして……お兄さんの事、全部話してもらう!」


 同時期、南半球の海……いや、「ランドグリス」に海水はない。湖と表すのが最適だろう……その上で、アクオーンの本神殿に向かっていたはずのはやては立ち止まって眼前を見据えていた。

「……アンタが、水の神獣アクオーンか?」

 小さく笑みを浮かべながら、騎士甲冑を着ていたはやてはその眼前にいる青髪碧眼の男性を睨んでいた。

「いかにも。『七神獣』の一角、水のアクオーンです。以後お見知りおきを」

 恭しく頭を下げるアクオーン。一見好青年に見えなくはないが、はやては知っていた。
 このアクオーンという神獣が、水のように冷たく、冷淡な性格をしているという事を。

「用件は……分かってるよな?」

「あのユーノという青年の事ですか? それとも……私自身の封印の事ですか?」

「意地悪なやっちゃな……本当は前の方や言いたいところやけど、うちにもやらなあかん事がある。だから……リィン!」

「はいです!」

 それまではやての後ろにいたリィンが前に出る。それを合図に、はやては彼女を文字通り取り込んだ。

「ユニゾン・イン!」

 融合型デバイス……別名『ユニゾン・デバイス』。姿と意志を与えられたデバイスが、状況に合わせ術者と「融合」し魔力の管制・補助を行う特殊なデバイスで、使い手もそう多くはない。むしろ、はやてとその守護騎士以外に使い手は今のところ存在していない。それほど希少なデバイスなのである。
 ユニゾンをした証として、はやての髪と瞳の色が変わった。同時にそれまでもかなり高かったはずのはやての魔力がさらに向上する。

「ほう……正直驚きました。まさかここまでの魔力を保持しているとは」

「……うちだってこの十年間、ただぼーっとしていたわけやないって事や!」

 はやてがそう言うと、アクオーンは小さく頷き、

「我が前に……『フロッド・ノア』」

 そう呟くと同時に現れる、水色の弓。日の光を浴びて輝くそれを見て、はやては何となく綺麗だなと感じていた。

「では……始めましょう」

「そやな……始めよか」

 シュベルトクロイツを構えながら、はやては顔から笑みを消した。

「終末の笛を、鳴らす為にな!」


 二人が戦いを始めたのと同じ頃。
 なのはは中央神殿の中庭を一人で歩いていた。
 平日の為かなのは以外の人影はない。本当に静かだった。

「ユーノくん……ユーノくんは、ここに来たの? 来て、いたの?」

 手に握ったリボンを見つめながら、なのははポツリと呟いた。
 ……いつも、いつでも連絡を取れたはずだった。どんな時間でも、どんな時でも、笑顔でなのはの言葉に耳を傾けてくれた。逆に、どんな時でも彼からの通信は受けていた。それが、なのはの楽しみでもあったから。
 だが、今ユーノはなのはの近くにいない。連絡を取ろうとしても、繋がらない。どうしてだろう。いつまでも煮え切らない自分の態度に、ついに愛想を尽かしたのだろうか。
 そんな事を考え出した自分の頭を激しく左右に振った。駄目だ、どうも今は自分の感情を上手くコントロール出来ない。

「……相変わらず面白いな。百面相とはなかなか難易度の高い芸を見せてくれる」

「えっ!?」

 なのはは驚き周囲を見渡す。すると、前方に見慣れない何者かがいた。
 全身を黒ずくめのローブで纏った、黒い仮面を着けた何者かが。

「あなた……誰?」

 少なくともなのはの知り合いではない。昔同じように仮面をつけた知り合いがいるにはいたが、それとはどうも違うようである。

「迎えに来たんだ……なのは」

 そう言い放つ声はどうやら男性のようだった。仮面で声がくぐもって正確な声は判別できなかったが。
 だが……なのはは何故かどこかで、聞いた事があるような気がしてならなかった。

「迎えに来たって……私を?」

「ああ、そうだよ。さあ、おいで……」

 仮面の男はそう言って手を伸ばす。その声はどこか歓喜に満ちている気がした。

「そして鳴らそうじゃないか……祝福の鐘を。混沌の伴侶として」

「はぁ!?」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまうなのは。まあ、当然といえば当然である。伴侶とは確か花嫁……つまり、妻の事であるのだから。

「あの……やっぱりお相手間違っていません?」

 思わずそう尋ね返すが、多分その可能性は薄いだろう。何しろさっき、自分の名を呼んでいたし。
 だが、なのはの疑問に対する答えは返ってこなかった。

「なっ!?」

 代わりに返ってきたのは、なのはの足元に打ち込まれた魔法弾。漆黒の弾だった。

「悪いけどあまり時間がないんだ。強引にでも、連れて行かせてもらうよ」

「……はぁ」

 なのはは盛大にため息を吐いた。そして、

「……アクセルシューター、シュート!」

「ぬっ!?」

 お返しといわんばかりに、仮面の男の足元に魔法弾を放つ。着弾した床に穴が開き、土煙が宙に舞った。
 そしてその土煙が晴れてくると同時に、仮面の男の目にバリア・ジャケットを身に着け、レイジングハートを起動させたなのはが映る。

「せっかくのお申し出だけど……私がお嫁さんになってもいいなって思う異性は、今のところ一人しかいないから」

「ふぅん」

「だからこれ以上邪魔をするなら公務執行妨害……あ、今は公務じゃないか……じゃあ公衆わいせつ罪で逮捕するよ」

 そう言ってなのははレイジングハートを構える。何気に目が怒っていた。
 だが、そんななのはの様子をものともせず、仮面の男は笑い声を漏らす。

「いいね、それくらいの威勢のよさがないと……つまらないからね」


 戦いの火蓋が、今まさに落とされようとしていた。

テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

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